(以下は、2016年4月20日、違憲訴訟の会決起集会における、共同代表寺井一弘による冒頭ご挨拶の全文です。)
本日は大変お忙しいところ、「安保法制違憲訴訟提起に向けての決起集会」に全国各地から大勢の方々がお集まりくださり、大変有難うございました。
私からは最初に、本日の決起集会の趣旨と訴訟提起に関するご報告を簡潔に申し上げたいと思っております。
改めてご説明するまでもなく、安倍政権は昨年9月19日にわが国の歴史上に大きな汚点を残す採決の強行により集団的自衛権の行使を容認する安保法制を国会で成立させ、先月の29日にこれを施行いたしました。そして安倍首相は憲法改正に着手することを明言し、7月の参議院選挙ではそのために必要な3分の2の議席獲得を目指すに至っています。一方、最近の世論調査では、国民の半数近くが「安保法制は必要であると回答した」との報道もなされています。わが国の平和憲法と民主主義を守り抜いていくにあたって、今日の事態はきわめて深刻であると言わなければなりません。
私達はこのような危険な状況を察知して昨年9月に「安保法制違憲訴訟の会」を結成してこれまで全国の憲法問題に強い関心を持つ弁護士仲間と平和を愛する市民の皆様に対して、共に違憲訴訟の戦いに立ち上がるよう呼びかけて参りました。その結果、本日までに全国すべての地域から630名を超える弁護士が訴訟の代理人となることに賛同するという声が寄せられ、市民の方々からは今回の訴訟の原告となるとの意思が次々と表明され、その数は短期間ながら2000名を大きく超えるまでになり、委任状も現在まで600名近く集まっております。この勢いは今後もさらに広がっていき、全国的に怒涛のような流れになっていくことは間違いありません。
そこで、私達は立憲主義を堅持し、わが国を二度と再び戦争をしない国にしていくという国民市民の強い願いと期待にこたえてこの度「安保法制が憲法違反であることの判断を求める訴訟」、すなわち、「防衛出動命令等の差し止めを求める行政訴訟」と「安保法制の成立により受けた精神的苦痛の回復を求めて国家賠償請求訴訟」の第一次提訴をすることといたしました。
具体的な訴訟提起の期日ですが、来週の火曜日の26日午後2時を予定しております。東京地方裁判所に対して差し止め訴訟については原告が50名以上、代理人600名以上、国家賠償訴訟については原告500名以上、代理人600名以上になると思っています。
なお、東京地裁以外では、原発を間近に抱える福島地裁いわき支部でも、近々の提訴が予定され、その後、北から、札幌、仙台、埼玉、横浜、長野、名古屋、大阪、京都、岡山、広島、高知、愛媛、福岡、長崎などでの提訴が準備されております。その動きは時を追って急速に全国に拡大されていくものと考えています。
私達は圧倒的多くの憲法学者、そして最高裁長官や内閣法制局長官を歴任された有識者の方々が安保法制を憲法違反と断じてされている中で、裁判所が沈黙することは、基本的人権を保障することを使命とする司法、そして憲法の基本的な目的に背馳し、それらの存在意義を根底から危うくすると判断した次第です。これは平和国家のあり方を基本的に変えることに他ならないからです。
安倍政権はこの安保法制問題について国民が「忘却」することをひたすら期待しています。私達は、こうした策動に屈することなく、「2015年の夏」を忘却することなく闘い続けることができるかどうかに、これからのわが国の将来がかかっていると思っております。
私達は「歴史と知性に背を向けて開き直る安倍政権を絶対に許してはならない」との立場を堅持し、裁判を通じて社会にインパクトを与えながら世論を形成し、国民市民の皆様と共に必ずや安保法制を廃棄に追い込むことを最終目標にして、前例のない違憲訴訟に挑んで参りたいと決意しております。
皆様方の限りないご支援とご協力をお願いして、冒頭の挨拶とさせていただきます。