安保法制違憲北海道訴訟原告団
安保法制違憲北海道訴訟弁護団
本日、札幌地方裁判所民事第5部(裁判長岡山忠広(代読))は、安保関連法が憲法に違反し、平和的生存権・人格権が侵害されたとして、国を相手に訴えた国家賠償請求訴訟と自衛隊の行動の差止を求めた差止請求訴訟について、前者は原告らの請求を棄却する判決、後者は請求却下の判決を言い渡した。
その理由として、本判決は、国家賠償請求については、原告らの主張する「平和的生存権」や生命身体の安全を含む「人格権」は、具体的な権利性がなく、国家賠償法上保護された権利ないし法的利益と認めることができないこと、差止請求については、原告らが求める差止の対象は行政の行使そのものであり、その行使に対し、民事上の請求としてその差止を求める訴えは不適法であること、また、行政法上の差止請求としてもその要件を満たしていないことをあげる。
しかし、本判決は、安保関連法が憲法に明白に違反していること、日本が戦争に巻き込まれ、テロの攻撃対象となる具体的な危険性があること、安保関連法が実施されたこの3年間、日米の一体化が深化し世界中の紛争に関わる米軍と行動を共にする機会が増え、日本を敵視していなかった国や武装組織が日本を「敵」と見做す具体的な可能性があることを直視しない、極めて不当な判決である。
それだけでなく、裁判所は、原告が申請した本人尋問や証人尋問を一切行うことなく、また一部原告の具体的被害の主張すらさせないまま判決を言い渡したもので、それは原告敗訴の判決をしようという予断を抱いていたものと言わざるを得ない。それは公正な裁判による判決とは到底言えるものではない。
内容においても、原告らの具体的被害を、「自らの信条や信念と反する立法が行われることによって生ずる精神的苦痛にすぎず、間接民主主義の下では社会通念上受忍されるべきもの」などと一蹴し、例えば、いつ自分の息子が命を奪われるかわからないという精神的苦痛だけでなく、親子関係を断絶せざるを得ないというほどの現職自衛官の母親である原告の苦痛、苦しみについても、「いまだ集団的自衛権の行使等として出動命令が出される蓋然性は低く、これら原告の抱く不安や恐怖はいまだ抽象的な不安の域を出ない」などと目を向けようとしないもので、全く空疎な判決である。
さいごに、本判決のように、安保関連法に対し、裁判所が沈黙することは基本的人権の保障を使命とする裁判所の責務の放棄であることを指摘する。
私たちは、裁判所が憲法で保障された違憲立法審査権を積極的に行使することを札幌高等裁判所に強く求めて、直ちに控訴することを決めた。
同時に、札幌高裁では、必ず勝利するために全力を尽くす決意を表明する。
以上