安保法違憲訴訟(沖縄)の福岡高裁那覇支部判決に抗議する声明

2021 年 2 月 18 日

沖縄安保法違憲訴訟弁護団

1 本日、福岡高裁那覇支部において、安保法の違憲性を問う訴訟の控訴審判決が下された。
結論は、1審同様に原告らの請求を退けるものであり、安保法が違憲であるとの原告らの主張を裁判所は認めてなかった。この点については、1審判決同様、安保法のごとく憲法の根幹を揺るがしかねない重大かつ深刻な問題に対して司法権を担う裁判所が真摯に向き合おうとしない姿勢、そして憲法を頂点とする立憲主義が崩壊していくことへの強い危惧という批判がそのまま当てはまる。

2 しかし今回の控訴審判決の不当性は、その点にとどまらない。
控訴審第1回期日において、原告らは、1審で排斥された主張を補強すべく、1審で採用されなかった専門家証人の尋問を改めて申請し、その意見書作成を準備中である旨述べようとした。ところが裁判所は、これを遮るようにしていきなり審理を終結させ、判決言い渡し期日を指定する、という暴挙に出た。
原告らの今後の立証予定を聞き、それを検討するのではなく、これを遮るようにして結審を強行した裁判所の態度は、原告らの訴訟活動を封じることを意図した露骨な訴訟指揮というほかなく、安保法の違憲性を認めないという予断を最初からいだいていたとしか考えられない。
しかも、いまだ沖縄県独自の緊急事態宣言が解除されていない中で、判決言い渡し期日の変更を求めた原告らの申立てをも一顧だにしなかった。これでは、高齢者も多い原告らの裁判を受ける権利(憲法 32 条)は有名無実となってしまう。

3 現在、全国の裁判所で同種訴訟が係属しており、控訴審に移行しているものもある が、全国の高等裁判所の中でも、今回の福岡高裁那覇支部のような不当な訴訟指揮を行った裁判所は存在しない。
札幌地裁は、原告本人尋問も専門家証人の尋問も採用しなかったが、その控訴審である札幌高裁は一転して複数の専門家証人の尋問を採用した。東京地裁は、原告本人尋問のみ採用し専門家証人の尋問を採用しなかったが、その控訴審である東京高裁は、やはり専門家証人の尋問を採用している。
ところが、この沖縄訴訟では、那覇地裁は原告本人尋問のみ採用したにとどまり、しかも今回控訴審の福岡高裁那覇支部は、専門家証人の尋問を一切採用しなかったのである。

4 日本国憲法は、立法や行政からの司法権の独立を明言し、さらに裁判所に違憲審査権を与えることによって(憲法 81 条)、三権分立の原理をより実質化しようとした。
ところが今般の福岡高裁那覇支部の判決とそこに至る訴訟指揮の不当性は、三権分立原理がもはや空洞化しているのではないか、との懸念をいだかせる。
われわれは、今回の判決とそこに至る訴訟指揮の不当性を断じて許すことができな い。立憲主義と平和主義を根幹とする憲法を守りぬく努力をさらに継続する所存である。

以上

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