信州安保法制違憲訴訟判決に対する抗議声明

2021年6月25日

信州安保法制違憲訴訟原告団
信州安保法制違憲訴訟弁護団

本日、長野地方裁判所民事部(裁判長真辺朋子)は、信州安保法制違憲訴訟について、原告ら362名の請求をいずれも棄却する不当判決を言い渡した。

原告・弁護団は、2016年(平成28年)6月28日の提訴以来5年間、集団的自衛権等を認めた「新安保法制法」は、憲法前文、憲法9条の平和主義に違反する、と主張してきた。そして、安倍内閣及び国会が、集団的自衛権等を容認するこの憲法違反の新安保法制法を制定・施行した結果、実際に自衛隊とアメリカ軍が、「北朝鮮」や「中国」などを仮想敵国とする共同訓練や、自衛隊がアメリカ軍を護衛することが頻繁に行われるようになった。さらに、自衛隊は、「敵基地攻撃力」となり得る「いずも型空母」「長距離ミサイル」「F35-A及びF35-B戦闘機」などの攻撃型兵器の装備を着々と進めている。こうした状況下で、我々原告らは、主権者として憲法上保有する次の4つの権利・利益が侵害されたと丁寧に主張・立証してきた。

1 憲法前文、憲法9条、憲法13条などを根拠に憲法を体系的に理解したとき認められる「平和的生存権」の侵害

2 同じく、憲法9条を持つ日本という戦争をしない平和な社会で、戦争で人を殺さず、殺されず、戦争に加担しないで平穏に生活する「人格権」の侵害

3 日本国憲法のよって立つ立憲主義の統治の下では、内閣総理大臣、国会議員、裁判官らの公務員は、いずれも日本国憲法を遵守し、立憲主義に基づき行政権、立法権、司法権を行使することにより、原告ら市民の基本的人権を侵害しない、市民は公務員にそのような安定した立憲主義に基づく統治を期待する権利・利益を有する旨の「安定した立憲民主政に生きる権利・利益」の侵害

4 憲法9条の下では、「我が国が攻撃された時」にだけ「個別的自衛権」が認められる。したがって、アメリカなどの「他国が攻撃された時」に行使できる「集団的自衛権」等を安保法制で認めるには、それに先行して、憲法9条の改正をしなければならず、それを怠ったことによって、主権者である原告らが憲法上保有する「憲法改正手続に参加し、憲法改正案について国民投票する権利」の侵害

本日、長野地裁民事部は、上記1ないし4の原告らが憲法上保有する権利・利益について、いずれも国家賠償法上認められる具体的な権利・利益ではないとする極めて不当な判断をした。

そのうえ、集団的自衛権等を認めた新安保法制法が、憲法前文、憲法9条などに違反するか否かという、本件裁判で最も重要な争点・論点について、一切の憲法判断を回避した。行政と立法が法的クーデターというべき前例のない憲法破壊の暴挙を行ったとき、三権分立、司法の独立が認められている裁判所、裁判官こそが良心に従い、「憲法の番人」となり「憲法秩序の最後の砦」となるべきであった。しかし、長野地裁民事部の裁判官らは、この国民から負託された憲法上の最も重い職責を果たさなかった。これにより、裁判所・裁判官もまた、憲法破壊に加担した。

我々原告、代理人弁護士らは、本日の憲法判断回避の不当判決を絶対容認することはできない。今を生きる我々原告だけでなく、未来を生きる人々の為にも我々は本日の不当判決を断じて容認できず、強く抗議する。

我々は、本日の不当判決に対し東京高等裁判所に控訴し、主権者たる日本国民の責務として、憲法9条の平和主義擁護の闘いを今後も粘り強く継続する。

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