安保法制違憲福岡差止・国賠訴訟の不当判決に抗議する声明
2021年(令和3年)6月9日
安保法制違憲福岡訴訟原告団
同 弁護団
1 本日、福岡地方裁判所第1民事部(徳地淳裁判長)は、安保法制違憲福岡差止・国賠訴訟において、原告らの国家賠償請求を棄却し、自衛隊出動等の差止請求を却下する不当判決(以下「本判決」)を言い渡した。
2 安保法制違憲福岡差止・国賠訴訟は、確立した憲法解釈を変更し集団的自衛権行使を容認した安倍前政権による2014年(平成26年)7月の閣議決定、及びそれをうけた翌2015(平成27)年の新安保法制法案の閣議決定並びに国会提出、そして国会による同年9月の新安保法制法の制定がいずれも憲法に違反することから、違憲の新安保法制法に基づく自衛隊出動等の差止と違憲の閣議決定及び立法により被った精神的苦痛に対する慰藉料(国家賠償)を求めて原告らが国を被告として提起した訴訟である。
3本判決は、原告らの請求を全面的に棄却ないし却下した。原告らが被った平和的生存権、人格権、憲法改正・決定権に対する侵害を、全て否定するという不当な判断を示したものである。
また、閣議決定の違憲性、新安保法制の違憲性について、何らの言及もせず、判断を回避した。
本来、請求を棄却するにせよ認容するにせよ、閣議決定及び新安保法制法の合憲・違憲性の判断は、避けて通ることができないはずのものであった。
私たちは、本判決が示した不当な結論、及び違憲性判断を回避したその姿勢に対し、強い怒りを以て抗議する。
4そもそも、本訴訟においては、裁判所が原告本人尋問を3名について採用したのみで、原告らの申出た証人尋問を一切採用せず、原告らに必要な立証を尽くさせないという不当な訴訟指揮をしたため、私たちが担当裁判官3名の忌避を申立てたという経過を経て、本日の判決言渡し期日を迎えるに至った。
本判決の内容は、このような不当な訴訟指揮の延長上に位置づくものと言わざるを得ず、私たちはわが国の社会における本訴訟の重要性にいささかも向き合うことなく政治権力の意向を忖度し、司法の役割を放棄した裁判官の不当な姿勢そのものに対しても強く抗議する。
5新安保法制法が運用され続けることは、日本が憲法前文と9条によって70年以上にわたり保持してきた恒久平和主義を、集団的自衛権の名の下に放棄することを意味する。そこに待つのは、他国の戦争に深く関与し、日本人が国内外において殺し、殺される事態に突入していく未来である。
私たちは不当判決に屈しない。福岡高等裁判所に控訴し、全国の原告団、弁護団、市民と手を携えながら、今後も闘い続けることを誓うものである。
以上