(安保法制違憲訴訟全国ネットワーク代表声明)
「新しい戦前」と言われる状況のもと、憲法9条に違反することが明らかな安保法制について、最高裁が「だんまり」を決め込みました。
2015年に国民の大きな反対の声を押し切って成立した安保法制。その違憲性の判断を求める訴訟で、9月6日、初めて最高裁(第二小法廷)の判断が示されました(東京国賠訴訟)。わずか数行の門前払の判断で、憲法判断をすることなく、上告を棄却し、上告事件としても受理しないとする決定でした。
これは、憲法の守り手である裁判所が、行政や立法の暴走をチェックする役割を放棄し、司法権の存在意義を自己否定したものです。
安保法制違憲訴訟は、全国22の裁判所で25の訴訟が提起され、7699名の市民が原告となり、1685名の弁護士が代理人となりました。政府が長年憲法9条のもとでは認められないとしてきた集団的自衛権の行使を容認することへの怒りと危機感が広範な国民運動となり、その高まりの中で立ち上った訴訟です。原告ひとりひとりの生き方と平和への決意がこめられた訴訟です。
昨年12月の安保三文書により、敵基地攻撃能力が容認されて、安保法制の危険性はいっそう明白になっています。戦争をする国家づくりは、深刻なまでに進んでいます。さまざまな課題で、憲法を踏みにじり、国会を軽視し、国民の声を無視する政治手法が横行しています。こうした情勢のもとで、安保法制の違憲性を問う意義はいっそう大きなものになっています。
現在、安保法制違憲訴訟は、9件が最高裁に、10件が高裁にそれぞれ係属しています。これまで地裁や高裁は憲法判断を回避してきました。こうした中でも、今年、高裁で、憲法学者の長谷部恭男教授の尋問が実施されたり、石川健治教授の尋問が決定されるなど、違憲性の争点に向き合う姿勢を示している裁判所も出てきています。
最高裁は、憲法判断を回避しましたが、安保法制が合憲であるとの判断を示したわけではありません。今後の各地の控訴審でのとりくみによって、違憲判断を獲得する意義は大きく、また、その可能性はあるといえます。それは、今後の最高裁の判断を変える道を開きます。
全国各地の違憲訴訟は、安保法制の発動を許さず廃止を求める運動を励まし継続させる力になってきました。戦争をする国づくりが進む中で、「攻められたら、どうする」という発想とは違う、平和のつくり方が求められています。違憲訴訟は、そうしたとりくみとも連動してきました。今後も各地の訴訟の連携を強め、市民に幅広く働きかけていきます。
私たちは、主権者の立場から、裁判所に本来の役割を果たさせることをあきらめません。平和をつくるために、権力をしばる憲法を活かす、戦争の歯止めとしての9条を活かす、その努力を続けます。違憲訴訟をたたかい続けます。最高裁が「だんまり」を決め込むなら、私たちが声を上げます。
2023年9月9日
安保法制違憲訴訟全国ネットワーク
代表 内 山 新 吾