安保法制違憲北海道訴訟高裁判決に対する声明

2021年5月26日

安保法制違憲北海道訴訟原告団
安保法制違憲北海道訴訟弁護団

 本日、札幌高等裁判所第2民事部(長谷川恭弘裁判長)は、安保関連法が憲法に違反し、平和的生存権・人格権が侵害されたとして、国を相手に訴えた国家賠償請求訴訟と自衛隊の行動の差止を求めた差止請求訴訟について、一審判決(札幌地方裁判所2019年4月22日判決)を支持し、控訴棄却の判決を言い渡した。
その理由は、一審判決同様、原告らの主張する「平和的生存権」が具体的な権利性がないこと、及び安保関連法が制定されたことによって原告らには具体的な危険が発生しておらず、国家賠償法上保護された権利ないし法的利益が侵害されたとはいえないことを挙げる。
しかし、一審判決以来、原告が主張し、また本控訴審での証人尋問、原告本人尋問でも明らかになったとおり、安保関連法の制定によって日米同盟が強化され、私たちの国が米国の戦争に参加し巻き込まれる危険性が格段に高くなった。その結果、自衛官やその家族、海外で活動する人々を含むすべての市民一人一人が戦争による被害の危険に現実にさらされることとなった。
実際に、安保関連法制定後に、日米共同行動態勢の進化や共同訓練の強化、米艦防護など、米国と共に戦争を遂行するための準備が進められ、いつ戦争が起きても共同で行動できるような態勢が構築されているのである。
それにもかかわらず、本判決は、これら現実の状況を正しく認識することなく、私たち市民一人ひとりに及んでいる危険は「現実化しているものではない」「不安や恐怖を覚える控訴人らの心情」などと捉えているにすぎず、極めて不当な判決と言わざるを得ない。
そもそも、安保関連法は、憲法に明白に違反しており、そのことが指摘されながら十分な審議がなされないまま制定された法律であるから、違憲の法律であるとともに、政府、国会による制定行為自体が違法と言わざるを得ない。従って、憲法の番人たる裁判所は、敢然と憲法判断をして政府・国会の違法行為を非難すべきであるにもかかわらず、憲法論に踏み込むことなく、この問題に正面から誠実に向き合おうとしなかった。これは、裁判所がその職責を完全に放棄したものである。
私たちは、裁判所が憲法で保障された違憲立法審査権を積極的に行使することなく、国民、市民の平和と安全、基本的人権をないがしろにする判決を下したことに対して、強く強く非難するものである。

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