残念な判決が出ました。山口県の住民135名(判決時131名)が憲法違反の安保法制により平和的生存権、人格権、憲法改正決定権を侵害されたとして慰謝料を請求する訴訟で、本日、山口地裁は、それらの権利侵害を認めず、また、安保法制への憲法判断も行うことなく、原告の請求を棄却する判決を出しました。
山口地裁の裁判官は悩んだろうと思います。安保法制は、元内閣法制局長官が明言するように「一見明白に」憲法9条に違反するものだからです。本来、憲法改正手続をとらなければできないことを、閣議決定と法律の制定で行うという、あからさまな立憲主義(内閣も国会も憲法にしばられるという原則)違反のやり方で強行されたものだからです。そんなひどい内閣と国会の暴走に、司法に身を置く者が怒りを感じないわけはないからです。たしかに、日本の裁判所は、抽象的に法律の合憲性判断ができないとされています。しかし、その枠組みの中でも、一定の場合に裁判所は憲法の番人として憲法判断を積極的に行うことは可能です。山口地裁の裁判官がそこまで踏みきれなかったのは、大変残念です。
結果的に、山口地裁の判決も、これまでの全国各地の裁判所と同様に、判で押したような、憲法判断を回避する判決になってしまいました。しかし、私たちはこれであきらめることはできません。裁判所が頑なに憲法判断を回避さぜるを得ないのは、新安保法制がその実態に照らして如何なる論理を以てしても合憲だと判断できないからです。実際、安保法制の施行後、自衛隊の「普通の軍隊」化、日米同盟の強化がすすみ、米軍への武器防護など安保法制を根拠とする自衛隊の活動が展開され、とくに、最近の台湾情勢のもと、日本が戦争をする現実的な危険性が高まっています。また、立憲主義無視の政治が一層深刻なものになっています。国民が十分に情報を知らされず、自由な表現、発言が制約され、監視され、不都合な者は排除されるという社会では、戦争をとめることは極めて難しくなります。立憲主義を取り戻し、戦争につながる安保法制を廃止する必要があります。
私たちは、これからも平和を愛する主権者として、全国のみなさんと力を合わせて、安保法制に対して司法が機能し、裁判官が良心を発揮するよう、裁判官に迫っていきます。
「わや」な安保法制を許さないたたかいを、あきらめることなく、山口発で続けていきます。
2021年7月21日
安保法制違憲訴訟山口原告団安保法制違憲訴訟山口弁護団安保法制違憲訴訟山口訴訟の会